形だけだった日本のタレントマネジメントがやっと変わり始めた – プラスアルファ・コンサルティング鈴村 賢治さん×セレブレイン幸前 夛加史【後編】

セレブレインのコンサルタントとゲストが、ワインと料理を楽しみながら人事について本音で語り合う対談企画。第5回ゲストは、株式会社プラスアルファ・コンサルティング取締役副社長の鈴村 賢治さん。マーケティング領域から参入された鈴村さんならではの視点で日本の人事の課題に切り込んでいただきました。聞き手はセレブレイン取締役パートナー 人事戦略コンサルティング担当・幸前 夛加史が務めます。

第5回ゲスト:鈴村 賢治さん略歴
株式会社野村総合研究所を経て、2007年にプラスアルファ・コンサルティング創業。取締役副社長に就任。データ分析やテキストマイニングを使ったCS(顧客満足)向上やビッグデータ活用プロジェクトを数多く推進。CS向上にES(従業員満足)向上が欠かせないこと、自らが経営者として感じた人材マネジメントの解決手法として「タレントパレット」を開発。幅広い業界での人材活用・育成・離職防止の推進・啓蒙を支援している。

タレントパレットが生まれたのは「自分たちが必要だったから」

鈴村:実はタレントパレットを製品化したのは、自分たちが必要としていたからなんですよ。

幸前:えっ、そうなんですか。

鈴村:ええ、社員が少ないときはコミュニケーションをしっかりとれていたのですが、100人を超えると全員と密なコミュニケーションを取り続けることは簡単ではありません。社員のことはわかっているつもりだったのに、ある日突然「仕事が合わないので辞めます」とか想定外の理由を聞かされてショックを受けたりするケースも増えてきたんです。社員のことをちゃんと理解できていなかった、と。
タレントパレットの原点は自分たちの会社経営での課題に対して、弊社が得意とするデータ活用の観点から解決できないかというところなんです。だから、タレントパレットは弊社が一番のヘビーユーザーです(笑)。

幸前:社員のモチベーションの状態がわからないと、タレントマネジメントはできませんよね。モチベーションは人間関係によっても違ってきます。スポーツのチームも監督が変わるだけで大きく変わりますし。

鈴村:実は新バージョンで「上長変化」という機能が実装されたんですよ。これまでも「異動変化」という機能があって、これは部署を異動したことでモチベーションが上がったか下がったかを抽出する機能です。ただ、モチベーションの上下にはもう一つ大きなトリガーがあることがわかりました。それが「上司が変わること」だったのです。

幸前:たしかに、人間ですので、相性の良し悪しはありますからね。

鈴村:そうなんです。こういうことがわかれば、社員のことを考えて異動を行ったのに、その意図がきちんと伝わらずにモチベーションが下がり、結果的に離職してしまうような不幸な出来事はなくなっていくと思うんです。

幸前:なるほど!相性を見える化することで、そういったことにも生かせるんですね。

鈴村:そうなんです。人の相性というのは内面の情報ですよね。同じ大学だったとか、同じ釜の飯を食ったからとか、そういうことも実は相性を知る重要な要素だと思います。そのような相性を見える化したい。どういう情報をどのように掛け合わせると、人の相性が見える化できるか、そのようなことにもチャレンジしたいと思っています!

店長/加藤:続いてのお料理は当店の看板メニューでもある「四川唐辛子のペンネアラビアータ」です。ベーコンやアンチョビがたっぷりで、旨味と辛味のバランスの良いお料理です。

鈴村:イタリアンと四川の融合とはユニークですね。

幸前:鈴村さんは辛いのがお好きということですので、ぜひこちらも。

店長/加藤:合わせて赤ワインをどうぞ。南フランスのドメーヌ・ド・ガブラという作り手のテール・ルージュです。温かい味わいでスパイシーかつジューシー。スパイスと相性の良い赤ワインですよ。

鈴村:これは合いますね。料理だけでもいいけれど、これはワインがあるとまた違いますね。

幸前:絶妙な組み合わせですね。

人事情報には多くの定性情報が眠っている

幸前:そういえば、タレントパレットには、テキストマイニングの機能が最近ついたんですよね?

鈴村:そうなんですよ!

幸前:そもそもテキストマイニングとはどういうものですか?

鈴村:テキストマイニングは、自然言語解析技術を使ってテキスト情報を分析して、定量的に発言内容や発言傾向を分析するための手法なんですが、実は、弊社はこの分野で国内トップシェアの技術と実績を持っているんです。 これまでは、主にマーケティング業務において、顧客アンケートの自由回答の分析や、最近ではソーシャルメディア、特にTwitterなどの膨大な量の投稿内容の分析で活用されてきました。

幸前:それを、今回人事業務領域に持ち込んだと?

鈴村:はい。人事情報にも定性情報が多く存在しています。例えば、社員アンケートのコメントや自己申告書にある“将来のキャリア希望”などの自由回答、面談時のメモ、それこそ、採用におけるエントリーシートも貴重な定性情報です。そのほとんどが管理はされているものの、十分にデータ活用されていないのではないかと考えています。

幸前:たしかに、そもそも定性情報というのは、通常は1件1件読まないと内容を読み取れないので、現場で活用していきたいと思っていても、分析するのは簡単ではないですね。

鈴村:離職防止分析の1つに「離職ワード分析」という機能があるのですが、実際に、過去の業務日報や満足度調査の自由回答から、在籍者と離職者の発言傾向の違いを分析してみると、離職者には、特に「業務量」とか「相談しにくい」というキーワードの出現が多いことが分かりました。こういうのが分かれば、似たような発言をしている社員がいたら早めにフォローした方がよいわけで、こういうのが離職防止につながると考えています。人事領域に眠っている定性情報は、これからの科学的人事に欠かせない宝の山だと思っています。

店長/加藤:続いてのお料理は当店の新しい名物の一つでもある「刺激的なスパイスたっぷりの痺れ豚」です。八角を利かせて甘辛く似た豚バラ肉に、当店で「痺れスパイス」と呼んでいるスパイスをふりかけています。

鈴村:痺れスパイス、すごそうですね。

店長/加藤:実山椒をメインに、ニンニクやフライドオニオンなどをシェフが独自にブレンドしたスパイスになります。

幸前:おおっ、これはピリッときますね。

鈴村:心地いいスパイス加減です。なるほど、痺れ豚、ですか。

店長/加藤:お料理に合わせるワインは、先ほどよりも、もう少ししっかりした味わいの南アフリカのクライン・ザルゼ・ヴィンヤード カベルネ・ソーヴィニヨンを。

鈴村:ヨーロッパ風なのにどこかアジアな感じもあって、すごくおいしいです。 たしかにこれは赤ワインがあるといいですね。

幸前:僕も大好きで、毎回頼みます。

鈴村:これはワインが進んでしまいます(笑)。

日本の人事はいよいよ立ち行かなくなる段階にきた

幸前:それにしても、日本も今までの人材マネジメントスタイルでは人事部門が立ち行かなくなったというところにやっときたような気がしますね。どこかの時点で人事が経営や事業運営から切り離されてしまったように感じています。

鈴村:そうですね。たとえば人事評価は半期に一度という会社が多いですが、なぜ半期ごとなんですかと聞いても誰も回答できない。半期に一度面談だと、社員も評価の前になると急にやり始めたり、仕事のつじつまを合わせようとする。本来は日々の業務の中でリアルタイムに目標に対する達成感や満足感を図り、フィードバックしていくような動きに変えていかないと本質には変わらないと思います。

幸前:なかなか難しいところはありますね。人事評価を人事制度という全体のルールの中でどううまく運用するか、という儀式的なものになってしまっている会社も確かにあります。

鈴村:人事部門にはある程度文化を守る力学が働いていると思います。だけど、本当の人材活用を行うためには、自分たちのミッションについて、情報を管理するという観点から、積極的に経営や現場マネジメントの意思決定支援に活用していくというように、自らの役割を変えていかないといけないと思います。

幸前:それでいうと、ようやく節目に来たかなという感覚がありますね。たいていの人事トレンドがそうですが、アメリカから3年から5年遅れくらいで日本に入ってきています。ただ、タレントマネジメントという考え方が日本に入ってきたとき、日本にはまだいわゆる年功序列、終身雇用における職能等級制度というのがあって、一人ひとりというよりもマスで人材管理を行っていく文化でした。

鈴村:日本の文化とタレントマネジメントが組み合わさった混沌期があったわけですね。

幸前:モチベーションやタレントマネジメントの重要性って、実は15年くらい前から日本でもずっと言われ続けているんです。だけど、なかなか進まずに形だけになってしまっている側面もありました。ところが、いよいよ“社員が辞めていき、人が採れない”ということが課題になってきて、お尻に火がついたんですね。

鈴村:いよいよ日本の人材マネジメントも変革の時を迎えているわけですね。今日はとても楽しく会話ができました。ありがとうございました。

幸前:こちらこそ、熱い議論をありがとうございました!

今回のお店


あじる亭レピス
店名の「レピス」は仏語でスパイスの意味。世界のスパイスを使った料理とソムリエ厳選ワインを南仏のバルのようなおしゃれな空間で楽しめます。

取材を終えて
ライター・カメラマンの山田井です。あじる亭レピスのスパイスのきいた情熱的な料理はどれも絶品。食べれば食べるほど食欲がわいてきます。

鈴村さんのお話もまさにあじる亭レピスの料理のごとく、刺激的な言葉が次々に飛び出す熱い対談となりました。

個人的に、料理で特に印象に残ったのは「トリュフ風味のスクランブルエッグ」と「刺激的なスパイスたっぷりの痺れ豚」。

ワインとの相性も完璧で、こんなマリアージュが楽しめるのは一流のシェフと“全員ソムリエ”のあじる亭レピスだからこそ。

鈴村さん、幸前さんのお二人も感動されていましたが、たしかにこれは何度訪れても毎回頼んでしまうと思います。ぜひお店を訪れたら真っ先に注文していただきたいですね。