新卒採用でどうすれば“学生に選ばれる企業”になれるのか – 採用コンサルタント・谷出正直さん × セレブレイン関 伸恭 × セレブレイン倉本 健【後編】

セレブレインのコンサルタントとゲストが、ワインと料理を楽しみながら人事について本音で語り合う対談企画。第7回ゲストは、採用コンサルタント/採用アナリストの谷出 正直さん。売り手市場が続く新卒採用の現状と今後の展望について、企業と学生それぞれの目線から語っていただきました。聞き手はセレブレイン パートナー HR Techコンサルティング事業担当・関 伸恭と、人材開発コンサルティング シニアコンサルタントの倉本 健が務めます。

第7回ゲスト:谷出 正直さん略歴
採用アナリスト/コンサルタント。エン・ジャパンにて新卒採用支援事業に約11年携わる。2016年に独立し、現在は企業の新卒採用のコンサルティングや、採用アナリストとしてメディアへの情報提供や記事・コラムの連載、企業や大学でのセミナー講師など、幅広く新卒採用に関する情報を発信している。

学歴や偏差値よりも立ち振る舞いに人としての魅力が出る

倉本:学生さん側は就職活動に向けて、何を考えてどんなことをやっているのでしょうか。また、何をやるべきなのでしょう。私も娘がいるのですが、まわりに振り回されず自分の人生を生きてほしいと思っています。だけど、現実には企業やメディアからさまざまな情報が発信されてくるので、その中で知恵をつけて情報を選別しなければいけません。

谷出:情報を選別して自身で考える、ということは働く経験をしたことのない学生にとっては簡単ではないと思っています。その根っこにあるのは、学校教育を通じて、同質化させられてしまうという現状です。

倉本:ああ、それについては私も話したいことが山ほどあります(笑)。

関:私の子どもも、ちょうど小学生になるので気になるトピックです。

谷出:うちにも、今年小学生になる子どもがいるんですよ。

関:一緒ですね!

倉本:新卒の話からは脱線しますが、せっかくなので谷出さんの教育方針も伺いたいですね。

谷出:僕が日頃から子どもに伝えているのは「挨拶をする」「靴は脱いだら揃える」「帰ったらまずやるべきことをやってから、好きなことをする」の3つですね。マナーや躾の部分になりますが、新卒者向けの説明会に参加すると、そういった基本的なことに対する所作も学生によってかなり違うなと感じるんですよ。受付に来ても全然挨拶しない学生もいれば、挨拶したとしてもどこか不自然だったりする。そういった行動からおそらく、普段は挨拶していないんだろうなとわかってしまいます。

関:毎年たくさんの学生を見ている谷出さんならではの視点ですね。

谷出:学生から就活相談をされることも多いのですが、1~2時間話すと、企業が欲しいと思う人材かそうでないかはわかります。学歴や偏差値といったことではなく、立ち居振る舞いや人間としての魅力に違いが出るんです。突き詰めると、それって学校や家庭での教育やそれまでに培われてきた価値観に根ざしているのかなと感じています。

倉本:うんうん。

谷出:あとは子どもにはなるべく新しいことを経験させるようにしていますね。知らないことは選択肢に入ってこないですから。

関:育成理論としては、社会人にも共通する部分ですよね。

倉本:私はヘッドハンティングを仕事にしているのですが、いつも思っていることがありまして、それは20代の若い方であっても50代の人生経験ある方でも、人生のターニングポイントでの道の選び方には、その人の原体験というか、経験やルーツにすごく影響を受けるんですよね。なので、そういう人生の大切な節目でも力まずに自分らしい選択が出来る様な経験や準備を重ねてゆく事が大切だと思っています。私は、人は本当に十人十色で良いと思っていまして、その人にはその人なりの価値発揮の仕方があると思っているんです。ただ、価値発揮の仕方はいろいろあっていいのですが、やはり独りよがりでは上手くいかない。自分を活かすためには周囲に受け入れられるチャームポイントを持つ事がとても大事だと思います。自分なりの強みとチャームポイントの両方があって初めて自分らしい仕事が出来るのではないかな、と。 例えば、ほら、ものすごく優秀というわけではないのに、妙に早く上に上がっていく方とかいるじゃないですか。

谷出:可愛がられ力ですよね。

学生に選ばれる企業になるためにやるべきこと

関:さあ、続いてのお料理とワインです。

建部/店長:メインは牛ハラミのステーキです。あじる亭のスペシャリテですね。あじる亭は南仏のビストロをイメージしたお店ですが、特に現地で好まれる食材の一つがハラミなんです。日本だと焼き肉で食べることが多いと思いますが、それを塊で焼いてステーキにしています。

関:これも私の大好きなメニューです!

谷出:おいしそうですね!

建部/店長:合わせるワインはスペインのメンシアという品種を用いたフェント・ワインズの赤ワインです。深みがあってスパイシーで、肉との相性がとても良いですよ。

谷出:何だか良い香りがします!

関:おいしい。たしかにこのボリュームのあるハラミと合いますね!

倉本:どちらの味わいもより深みを増すような印象です。

関:思わず肉とワインのマリアージュに夢中になってしまいましたが(笑)。企業としては、売り手市場が続くなかでも優秀な人材を採用していきたい。どのように取り組むことで採用活動がうまくいくのでしょう。

谷出:そうですね、毎年40万人くらいの大卒学生が民間企業に就職を希望しています。また、優秀な学生は複数の企業から内定を獲得します。そのような学生に選んでもらうためには学生が自分の企業を“選ぶ理由”を先行投資で作れるかが大事だと思いますね。

関:選ぶ理由、ですか。

谷出:大事なことは、学生に自分の会社のことをちゃんと理解してもらうということです。事業内容はもちろん、大切にしている価値観や企業文化、ビジョン。それと学生が考える自身の将来像が合致するかどうかが選ぶ理由につながってきます。

倉本:それは、まさにマーケティングの視点ですよね。

関:学生にアプローチする方法や採用の形態も多様化していますよね。

谷出:そうですね。たとえば紹介業です。以前は紹介での採用というのは就職活動の後半戦に集中していました。もう1人採用したいけど、この時期から新たに探すのはなかなか難しいので紹介サービスを活用していた。ところが今は就職活動の前半戦からどんどん学生を紹介することを求められることが増えています。

関:それはどうしてですか?

谷出:一つは、新卒採用を支援する企業が、学生の個人情報を比較的簡単に入手できるようになったことですね。

倉本:それはどういったルートで入手するのですか?

谷出:例えばSNSです。以前は就職サイトを通してという形でしか学生と会うことができなかったのですが、今はTwitterやFacebookで学生を集めることもできます。そうすると、企業は解禁日を待たずに学生と接触が図ることも可能になります。採用支援サービス企業に依頼して、「●●大学の学生にだけ会わせて」みたいなことができるようになります。そして、実際に水面下で面談が進んだりします。

関:それは実質的な選考、ですよね。

谷出:そうですね。去年の選考解禁日は6月1日だったのですが、実際には解禁日を迎えたその時点で6割の学生が内定をとっていましたからね。その前年は5割でした。つまり1年間で1割増えていて、その数字だけみても、着実に早期化していることが分かってくるわけです。

倉本:となると今年は……。

谷出:さらに企業の動きが早くなるわけですから、もっと内定が早く出てくるでしょうね。

関:ますます企業が、学生に対して自社の魅力をどのように伝えていくかが重要になりますね。そうなると、人事も、もっと外に出て自社のブランディングや、マーケティングでいうところのリードジェネレーションなどに注力することが求められるのでしょうか。

谷出:ええ。そもそも知らない会社に学生が応募することはないので、まずは知ってもらわないといけない。それは別に就活が始まってからでなくてもいいのです。極端な話、子どもの頃から知ってもらっていればいいのです。ですから、これからは企業広報そのものが、採用活動においても価値を持ってくるでしょうね。採用担当者と広報担当者は今よりもっと近づき、一緒に取り組んでいくべきだと思いますよ。

倉本:結局は、自社の事業を磨き上げることにつながっていきますね。

谷出:例えば、もしAppleが新卒採用するとなったら大勢が応募しますよね。それは企業自体にファンが多いからです。全ての企業がAppleのように全世界に知られる必要はありません。要は自社の事業と、そのために採用したい人がどこにいるかの組み合わせです。東京で採用したいなら東京の学生に知られていればいいわけですし。

関:仰る通りですね。

谷出:あとは企業として、「うちにくると絶対にいいよ」としっかりアピールすることですね。

倉本:アピールできないってことは自信がないということ。実際、採用担当者の方が辞めてしまったりすることもありますしね(笑)。

谷出:そうそう。自分が来年くらいに辞めようって思っているようでは、学生に強くアピールすることはできないじゃないですか(笑)。

関:たしかに(笑)。最近はリファーラルによる採用も活発になりつつありますが、うまく行かないケースもあると聞きます。

谷出:リファーラル採用は決して簡単ではありません。仕組みを用意したけど、思うようにいかないことも多いです。働いている社員からの紹介ということですが、本当に仲の良い友人を自分が自信を持って働いている会社に引っ張ってこられるか。そこですよね。

関:企業と学生はお互い不幸にならないように、しっかりとマッチする相手を見つけてほしいですよね。その点で我々にできることって何でしょう。

谷出:学生さんによく言うのは、やりたいことを見つけられたらいいけど、見つけられなくても、誰かの夢を一緒に追いかけることで、それが自分の夢にもなっていく。そのためにできることを増やすともっと貢献できるから、自己研鑽していこうと伝えています。そして僕らは、学生に「そういう大人、超かっこいいな」って思ってもらえる社会をつくっていくべきですよね。

倉本:本当にその通りですね。

関:とても勉強になりました。谷出さん、ありがとうございました。

今回のお店
ワイン居酒屋 赤坂あじる亭

赤坂見附駅徒歩2分。各地で修業を積んだシェフ達の本格欧風料理とソムリエ厳選の世界各国のワインが楽しめるワイン居酒屋です。取り扱うワインは400種以上。赤坂でもトップクラスの品揃えを誇ります。
取材を終えて
ライター・カメラマンの山田井です。

今回のお話は新卒採用という身近な話題。何年も携わっておられる谷出さんならではの視点で、深い知見を得ることができました。

そんな語らいを一層盛り上げてくれたのが料理とワイン。

見た目にも美しいいちごとトマトのカプレーゼに、オムレツ、ステーキと、あじる亭屈指の人気メニューが勢ぞろい! どれもあじる亭を訪れたら一度は食べていただきたい料理ばかりです。ワインもまたすばらしいマリアージュでした。