エンゲージメントを高めることで企業に起きる変化とは? – スタメン 大西泰平さん × セレブレイン 山田和彦【後編】

セレブレインのコンサルタントとゲストが、ワインと料理を楽しみながら人事について本音で語り合う対談企画。第10回ゲストは、株式会社スタメン取締役マーケティング部長の大西泰平さん。昨今の人事業界でトレンドワードとなっているエンゲージメント経営についてお話を伺いました。聞き手はセレブレイン コンサルタント・山田 和彦が務めます。

第10回ゲスト:大西泰平さん略歴
1984年生まれ。大阪府出身。筑波大学卒業後、広告会社 大広に入社。2012年よりファーストリテイリングのユニクロ事業に従事。その後、語学留学を経て2014年よりnanilani,inc.でフロントエンジニア、Sekai Labでベトナム拠点事業責任者を務める。2016年8月より取締役として株式会社スタメンに参画する。

“会社に満足はしていても誇れない”という人は意外に多い

山田:エンゲージメントについてご説明いただいたところで、株式会社スタメンについても伺えればと思います。御社ではエンゲージメント経営にフォーカスしたコンサルティングサービス「TUNAG」を展開されていますよね。

大西:はい。エンゲージメント診断といって、現状の課題を可視化し、その課題に対しての打ち手を実施・運用した上で、さらにその効果を検証する、という三段構えでコンサルティングさせていただいています。

山田:分析する上で重要視している要素は?

大西:重視しているのは、自分の会社を家族や友人におすすめできるのか、誇らしく語れるのか、という点です。会社には満足しているけれど、家族や友人に対しては誇れないという社員がいるケースもあるんですよ。

山田:それはまた、一見すると矛盾しているような……。

大西:待遇は良いので満足度は高い。だけど会社に自信は持てない。そういう場合、課題は企業としてのブランディングにあることが少なくありません。従業員満足度調査などでは、そういった課題はなかなか見えてきません。エンゲージメントを診断することで初めて課題が可視化され、経営陣の皆さんにも納得していただけるのです。

山田:なるほど、面白いですね。会社の規模や待遇が必ずしもエンゲージメントとは一致しないと。

大西:消費財ではあまりないことですよね。めちゃくちゃ気に入っているのにおすすめできないというのは聞いたことがないです。

山田:気に入っているから独占したいときくらいでしょうか(笑)。

大西:(笑)。ところが人間関係だと普通にありえるんですよね。家族のことは大事だけど、反発してしまう……なんてよくある話じゃないですか。そういうウェットな部分は人間が絡むからこそだし、そこを掘り起こすことにも意味があるのだと思います。

山田:社員が心で思っていることをいかに引き出して、組織改善に役立てていくか、ですね。

ストーリーを伝えることでエンゲージメントを高めていく

小牧/店長:メインのお料理をお持ちしました。カナダ産のサーロインです。コーンを食べて育った牛で、肉のうまみが強く脂もしつこくないのであっさり食べられます。

大西:うわっ、これはもう見た目からしておいしそうですね!

山田:絶対に間違いない一皿ですね(笑)。

小牧/店長:そして合わせるワインはカリフォルニアのジンファンデルです。牛肉の脂が強い場合はタンニンが豊富なカベルネ・ソーヴィニヨンという品種がベストですが、今回は脂がそこまでではないので、旨味を増幅するジンファンデル品種でペアリングしました。

大西:肉がやわらかくてジューシーですね! この赤ワインも同じくジューシーな果実味があって、すばらしいマリアージュです。

山田:パワフルな組み合わせですよね。明日からまた頑張れそうなペアリングです!

大西:どの料理もおいしくてワインが進みすぎてしまいます(笑)。

山田:ぜひどんどん召し上がってください。……そして酔っ払う前にお話の続きを(笑)。他にエンゲージメント関係ではどんな事例がありますか?

大西:短期間で急成長を遂げた1,000人規模の企業の例をお話ししましょう。その企業は数年間で急成長したため、30代という年齢で役職を持っている初期メンバーが何人かいらっしゃいました。すると、最近入社した若手にとってその人たちは“年齢的には若いけれど、最初から偉い人”です。その人たちにも泥臭い苦労をした頃はあったし、その人たちが今のポジションに至るまでには、それ相応の困難があったはずなんですが、そういうことがなかなか具体的に想像できないわけです。

山田:たしかにそうかもしれません。

大西:その状態では、経営と現場に深い信頼関係を築いていくことは難しかったんです。そこで僕たちは、そうした幹部層の声を若手に届けることを提案しました。新人の頃は、こういうことがあったとか、こういう苦労をしたとか。本人の口から、当時を思い起こすことのできるぶっちゃけ話をリクエストしたわけです。

山田:若手にとっては新鮮な体験だったでしょうね。

大西:するとものすごく反響がありました。「○○さんにもそういう時代があったんですね」という声が集まり、古株メンバーと若手との接点が生まれたのです。

山田:幹部の方も年齢はそれほど上ではないわけですから、一度壁が取り払われれば若手の方とのコミュニケーションもうまくいきそうですね。

大西:この例で良かったのは、幹部の方や会社が紡いできたストーリーをしっかりと伝えられたことです。エンゲージメントとは関係性の質です。ストーリーが伝わると関係性の質が向上し、エンゲージメントも高まるのです。

山田:今のお話は若い会社の例でしたが、歴史が長い会社も同じですよね。創業当時の話や会社黎明期の話が若手にとって刺激になることは多いです。今は当たり前になっている製品の誕生秘話とか。そういうものを伝えていくことがエンゲージメントを高めることにつながるのですね。

大西:ええ。そして、できれば記事などで編集された情報よりも、当人が自分の言葉で語る方がいいでしょうね。

事業を多角的に展開することで若手にチャンスを与える

山田:そういえばスタメンでは既に新卒社員の採用を活発に行なっていると伺いました。

大西:2019年卒で2期目の新卒採用になりますね。

山田:会社を設立してからすぐに新卒採用をされているわけですが、何かお考えが?

大西:若いメンバーが活躍する会社を作りたいんです。ベンチャーなので中途で採用したほうが立ち上がりは早いのですが、中長期的に考えると若い社員が成長できる環境を整えることが大事です。そのためには早くから取り組む必要があると考えました。

山田:そもそもスタメンはどういったきっかけで創業されたのですか?

大西:代表の加藤と出会って会社を作ろうということになり、テーマを「地方発でも、全国区で活躍できるような人材を輩出できる会社」にしたのが最初です。加藤は事業を考えるのが大好きで、創業事業を固める上でいろいろアイデアを出してきたのですが、そのなかで自分たちがやる意味があって世の中に求められていると考えたのが、エンゲージメント領域でした。

山田:今後もエンゲージメント領域で展開していくのですか?

大西:もちろんそれもありますが、事業ポートフォリオはたくさん持ちたいとも考えています。それは、若手にチャンスを与えたいからです。ビジネスパーソンが成長するのは「ポストが人を育てる」ところが大きいのです。責任や役割を与えられてチャレンジしてこそ成長できます。僕や加藤もそういうチャンスを得て、20代から経験してきたことでここまでやってこれました。次はそのチャンスを若手メンバーにどんどん渡していきたいのです。

山田:なるほど、そのために事業を増やしていきたいと。

大西:事業が増えれば責任あるポストも増えて、若手にチャンスを与えられますからね。仮に300億円稼ぐとしたら、300億円のビジネスを一つ持つのではなく、30億円のビジネスを10個持ちたいですね。

山田:事業が広がると、「そもそもこの会社ってなんだっけ?」とビジョンが曖昧になることもありますよね。経営陣の考えも社員に伝わりにくくなっていきます。そうならないようにエンゲージメントを高めてしっかりとしたコアを作らないといけませんね。

大西:背骨となる事業は大事ですね。多角化しても崩れない組織を作ることを今のうちから考えていて、将来から逆算しながら組織を組み立てています。

無駄な会議は省き、1on1ミーティングはしっかりと行う

山田:今まさに成長し続けているなかで、スタメンさん自身がエンゲージメントで心がけていることは?

大西:時間の使い方は意識しています。たとえば定例の会議は極力設けていません。報告・共有だけの会議は生産高を下げてしまいます。ただし、1on1ミーティングはしっかりと行います。相互理解はエンゲージメントに欠かせませんから。

山田:どこにリソースを割くのか、メリハリを利かせているわけですね。御社はメディアでも取り上げられて注目が集まっていますよね。それもエンゲージメントに好影響が?

大西:メディアへの露出は確実に好影響がありましたね。社員が自分の仕事に誇りを持てるようになりました。お墨付きをいただけるのはベンチャーにとっては大きなことです。真摯に愚直に取り組んでいれば、見てくれている人はいるんだなと思いましたね。

山田:御社は名古屋に本社がありますが、名古屋のベンチャー事情はいかがですか?

大西:正直、まだまだ少ないですよ。ただ、その中でも名古屋は製造業が盛んなので、それに関するベンチャーが増えている印象です。AIを活用した物流効率化や自動運転などのベンチャーが生まれてきているのは、名古屋ならではかもしれませんね。

山田:ユニークですね! ベンチャーも本当に様々です。

大西:同じくらいの時期に創業したベンチャーで集まると、僕らはおじさんベンチャー扱いなんです(笑)。他のベンチャーは名古屋大学発の企業も多くて、経営陣も20代半ばくらいのすごくできる人たちが多い。彼らを見ていると、負けていられないなと思いますね。

山田:本日は参考になるお話をありがとうございました!

大西:こちらこそ、楽しくお話ができました。ワインもお料理も最高でした!

今回のお店

あじる亭

赤坂見附駅徒歩2分。各地で修業を積んだシェフ達の本格欧風料理とソムリエ厳選の世界各国のワインが楽しめるワイン居酒屋です。取り扱うワインは400種以上。赤坂でもトップクラスの品揃えを誇ります。

ライター・カメラマンの山田井です。

昨今、注目度が高まっているエンゲージメントという言葉について、あらためてしっかりと学ぶことができた対談。

多くの企業の現状を見てこられた大西さんならではの視点はとても参考になるもので、わかりやすい解説に目から鱗が落ちるばかりでした。

また、ワインと料理のペアリングも絶妙で、これぞワイン居酒屋あじる亭ならではといったマリアージュ!

肉には赤ワイン、魚には白ワインと思い込みがちですが、それだけではないということを体験することができました。皆さんもぜひあじる亭にお越しの際はワインと料理の組み合わせの妙をお楽しみください。